新年度が始まり、環境の変化が多い4月を経て、5月は心身のバランスを崩しやすい時期です。この時期に見られる「五月病」は、気分の落ち込みややる気の低下といった精神的な症状が特徴ですが、実はこれは心だけでなく体にも大きな影響を与えることをご存知でしょうか?

「最近なんとなく体が重い」「肩や背中がこってつらい」「頭がボーッとする」──こうした不調を訴える方が、5月に入ってから増える傾向があります。一見、単なる身体的な疲労に見えるこれらの症状ですが、実はその背景に心のストレス自律神経の乱れが潜んでいることも少なくありません。

ストレスや不安が続くと、私たちの体は常に「緊張状態」に置かれます。この緊張は筋肉に表れ、無意識のうちに肩や首、背中などの筋肉を硬くしてしまうのです。結果として血流が悪くなり、疲労物質がたまり、痛みやだるさとして感じられるようになります。

自律神経は、私たちの体のさまざまな機能を無意識にコントロールしている神経系です。呼吸や消化、体温調節、心拍数などを司っていますが、ストレスが強くなるとこのバランスが崩れます。

特に交感神経(活動モード)が優位になると、筋肉は常に収縮しやすくなり、リラックスしづらい状態に。この影響で、睡眠の質が低下したり、浅い呼吸になったり、回復力が落ちてしまうのです。

整体の視点から見ると、「心の状態は体のゆがみや硬さとして現れる」と考えます。ストレスが続いている人は、無意識に肩をすくめたり、呼吸が浅くなって胸が張った状態になっていたり、背中が丸まって内向きな姿勢になっていることが多いです。

これらの状態は、単なる姿勢のクセではなく、心の疲れが体に現れているサインとも言えます。そのため、体の緊張をゆるめたり、ゆがみを整えることで、心の状態も自然と軽くなっていくのです。

「心の問題は心でしか解決できない」と思い込んでいませんか? 実は、体からアプローチすることで心も軽くなるというのは、現場でもよく見られる事実です。

整体やストレッチ、呼吸法、軽い運動などを通して、緊張している筋肉をゆるめたり、呼吸を深めたりすることで、交感神経の過剰な働きが抑えられ、副交感神経(リラックスモード)が優位になります。すると、自然と不安が和らぎ、気分が落ち着いてくるのです。

特に5月のような時期は、意識的に**「がんばらない時間」「緊張をゆるめる時間」**を作ることが大切です。ゆっくりとした深呼吸をしたり、体を優しくさすったり、外の空気を吸いながら散歩するだけでも、心と体はリセットされます。

5月の不調「五月病」は、決して心の弱さからくるものではありません。新しい環境への適応という、体にとっても大きなチャレンジが影響している自然な反応です。

だからこそ、心の不調を「心の問題」とだけとらえるのではなく、「体を整えることで、心にもアプローチできる」という視点がとても大切です。肩こりや背中の重さといった体のサインを見逃さず、整体やセルフケアを活用して、心身のバランスを整えていきましょう。

あなたの痛みの背景には、もしかすると「心の疲れ」が隠れているかもしれません。心と体はつながっている。どちらか一方ではなく、両方をやさしくいたわってあげることが、早期回復の鍵となります。